【2023年10月から】年収の壁の見直しポイント2選!扶養内で働くには?

【2023年10月から】年収の壁の見直しポイント2選!扶養内で働くには?
マネ子

もっと稼ぎたいけど、扶養を出て働き損になるのは嫌だ!

そう思う人は多いですし、実際に扶養内でいるために、働く時間を調整している方は多いです。

そんな中、2023年10月から年収の壁が見直されるというニュースを見て、

  • 扶養から出ても、手取りが減らなくなるの?
  • そもそも、これまでと何が変わるの?
  • 労働者側にとって、本当の意味でお得な制度改正になっているの?

といった点について、疑問に思った方も多いはず…。

そこで本記事では、相談実績800世帯を超えるFP歴16年の土屋が、以下の3つのポイントを中心に役立つ情報を紹介していきます!

土屋剛(FP)

「扶養内で働きたい方」「扶養を出てもっと稼ぎたい方」のどちらも、今後の働き方を考える上で知っておいたほうが良い情報になっております。

ぜひ、最後までご一読くださいね!

執筆者・監修者

土屋 剛(つちや ごう)

株式会社FCTGファイナンシャルプランナーズ:代表

土屋 剛
CFP®/二種・一種証券外務員資格/日商簿記2級
もくじ

そもそも年収の壁とは?10月から見直される2つの理由

そもそも年収の壁とは?10月から見直される2つの理由

年収の壁とは、

  • 扶養内で働きたいパートやアルバイトが
  • 手取りが減らないように
  • 稼ぐ額を調整する年収のボーダライン

のことです。

年収の壁はいろいろありますが、主に意識されるのはその年収を超えると手取り額が大きく減る

  • 年収106万円
  • 年収130万円

の2つの壁になります。

そして、その2つの年収の壁が、2023年10月から見直しされることになりました。

土屋剛(FP)

なぜ、年収の壁の見直しが行われるのかは、この後に詳しく紹介していきますね。

①働き控えによる人手不足を緩和するため

2023年10月から年収の壁の見直しが行われる1つ目の理由は、「働き控えによる人手不足を緩和するため」です。

というのも、日本は少子高齢化のため、2030年(今から7年後)には労働人口が644万人も不足する※1と言われています。

そのため、政府はこの問題を解決するために、働く時間を調整している扶養内パートの方が、年収の壁を今より意識せず働けるように環境を整備しているのです。

実際に、野村総合研究所が2022年9月に全国の20~69歳の有配偶パート女性3,090人を対象に行った調査※2によれば、

  • 年収の壁を超えないように労働時間を調整している人:61.9%
  • 年収の壁を超えても、働き損にならないなら今より年収を増やしたい人:78.8%

といった結果が出ており、いくら賃金を上げても年収の壁によって働き控えを選択する人が多いことがわかっています。

②物価高でも稼ぐ力を強化しにくいから

2023年10月から年収の壁の見直しが行われる2つ目の理由は、「物価高でも稼ぐ力を強化しにくいから」です。

今では、毎日のように耳にする”値上げ”のニュース。

ニッセイ基礎研究所の「世帯属性別にみた物価高の負担と過剰貯蓄(2022年7月15日)」によれば、物価高による一世帯あたりの負担額は、二人以上勤労者世帯で約10万円と試算されています。

しかし、年収の壁による働き損問題が解消して、

  • パートタイムの女性が労働時間を2割増やせれば
  • 世帯年収が約4%増えて
  • 物価高による負担額を上回る効果が期待できる

ことがわかっているのです。

つまり、経営者側の人手不足問題だけではなく、労働者側の家計負担の問題解決のためにも、年収の壁の見直しが必要とされています。

労働時間の増加によって世帯年収が増える例

パートの勤務時間を増やして世帯年収が増える例
土屋剛(FP)

では次に、2023年10月からの「年収の壁の見直しポイント」について詳しくお話していきますね!

【年収の壁の見直し】2023年10月から変わる2つのポイント

【年収の壁の見直し】2023年10月から変わる2つのポイント

2023年10月から変わる年収の壁の見直しポイントは、

  1. 106万円の壁の支援策:手取りが減らないように助成金を支給
  2. 130万円の壁の支援策:一時的な増収なら扶養内のままでもOK

の2つです。

土屋剛(FP)

それぞれの支援策を利用する際の注意点も、あわせて解説していきますね!

106万円の壁:手取りが減らないように助成金を支給

2023年10月からの年収の壁の見直しポイント1つ目は、「年収106万円以上稼いでも、手取りが減らないように助成金が支給される」です。

2023年9月末までは、

  • 従業員101人以上(2024年10月からは51人以上)の企業で
  • 週20時間以上働いて
  • 月収8.8万以上(年収106万以上)稼ぐと

勤務先の社会保険や厚生年金に加入する影響で、保険料が発生し”手取りがガクッと減る問題”があり、働き損を避けるためには働く時間を減らすしかありませんでした。

土屋剛(FP)

そこで政府は、この「106万円の壁問題」を解決するために、以下のような支援策の実施を決定したのです。

106万円の壁の支援策

年収106万円以上になることで、保険料負担が発生する方の手取り収入を減らさない取組をした企業に対し、労働者1人あたり最大50万円を支援する。

手取りを減らさない取組とは?

  • 社会保険適用促進促進手当を支給(社会保険料の算定対象外)
  • 賃上による基本給の増額
  • 所定労働時間の延長

助成金の活用イメージ

助成金の活用イメージ
マネ子

それなら安心して、106万円の壁を超えても働けそうね!

土屋剛(FP)

ちょっと待ってください!

106万円の壁の支援策を利用する場合には、ある2つの注意点をチェックしておく必要があります。

この後に詳しく紹介するので、手取りを減らしたくない方は、ご一読いただいてから働き方について考えてみてくださいね!

注意点①すべての企業が支援策に対応しているわけではない

106万円の壁の支援策の注意点1つ目は、「すべての企業が支援策に対応しているわけではない」です。

大前提として、この支援策の恩恵を受けるためには、勤務先が”手取り収入を減らさない取組をしている必要があります。

また、はじまったばかりの支援策で不明瞭な点も多く、企業側の手続きなども混乱しやすいことから、2023年10月すぐから対応してもらうのは難しいケースも多いです。

そのため、仮にこの支援策を利用して年収106万円の壁を超えることを検討している場合には、

  • 働く時間や金額を増やす前に
  • 勤務先に「どのような対応」を「いつから」してもらえるのか
  • よく確認・相談をしたうえで

勤務時間の調整等をするのが安心だと言えるでしょう!

注意点②助成金はあくまでも一時的な対応

106万円の壁の支援策の注意点2つ目は、「助成金はあくまでも一時的な対応」です。

106万円の壁の支援策にも記載されているとおり、助成金は労働者1人あたり最大50万円までしか支給されません。

つまり、1人あたりに支給される助成金には制限があり、恒久的に年収106万円の壁を超えた際の保険料負担が無くなるわけではないのです。

実際に、厚生労働省の年収の壁・支援強化パッケージでも、今回の支援策は”当面の対応として”行うものだということが明記されています。

土屋剛(FP)

根本的な年収の壁の見直しは、2025年度あたりに行われるのでは?といった話が出ています。

ですので、今回の支援策は”期間限定のもの”であることを念頭において働き方を考えたほうが良いでしょう!

では次に、年収130万円の壁の支援策についてお話していきますね。

130万円の壁:一時的な増収なら扶養内のままでもOK

2023年10月からの年収の壁の見直しポイント2つ目は、「年収130万円以上稼いでも、一時的な増収なら扶養内のままでもOK」です。

2023年9月末までは、以下5つの社会保険の適用条件すべてに該当しない方でも、年収130万円以上を超えて稼ぐと扶養から外れて、

  • 国民年金
  • 国民健康保険

に加入する影響で、手取りが減る”働き損問題”が発生していました。

社会保険の適用条件

  1. 勤務先の従業員数が101人以上
    ※2024年10月からは51人以上
  2. 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  3. 週の所定労働時間が20時間以上
  4. 月額賃金が8.8万円以上
    ※賞与・残業代・通勤手当すべて含まない
  5. 学生以外
    ※休学中・夜間学生は加入対象

そのため、年末などの繁忙期であっても、年収調整のために働き控えをする人が多く、人手不足に困る企業が多かったのです。

土屋剛(FP)

そこで、政府はこの「130万円の壁問題」を解決するために、以下のような支援策の実施を決定しました。

130万円の壁の支援策

扶養内で働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなど一時的に収入が上がった場合、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養内のままでいれる仕組みにする。

支援策活用イメージ

支援策の活用イメージ
マネ子

この支援策を利用すれば、いつも勤務先から「年末年始に人手が足りないから、シフトを増やしてほしい!」って言われてたのを断らなくても良くなるってことね!

土屋剛(FP)

そうですね。”一時的”であれば収入を増やせるので、扶養のままでいたい労働者にも忙しいときだけ人手がほしい経営者にも、プラスの支援策と言えますね!

マネ子

でも、やっぱり130万円の壁の支援策にも、何かしらの注意点があるんですよね?

土屋剛(FP)

するどい質問ですね!

おっしゃるとおり、130万円の壁の支援策を利用する際にも、これから紹介する2つの注意点を意識することが重要になります。

注意点①一時的増収について事業主の証明と保険組合の認可が必要

130万円の壁の支援策の注意点1つ目は、「一時的増収について事業主の証明と保険組合の認可が必要」です。

一時的な増収があって年収130万円を超えた場合、自動的に扶養内のままでいることが認められるわけではありません。

年収が130万円以上となる場合には、扶養内でいるために被扶養者の資格確認の際に、人手不足による労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動である旨の事業主の証明を添付しなければなりません。

また、この証明内容を配偶者の健康保険組合などが個別に判断し、認めてくれた場合にのみ扶養内のままでいられることが決定します。

ですので、もし勤務先からシフトを増やせないか相談があった場合には、勤務時間を増やし年収130万円以上稼ぐ前に

  • 勤務先に、一時的増収についての証明書を発行してもらえるか
  • 配偶者の健康保険組合に、証明書があれば扶養内のままでいられるのか

を事前確認したほうが良いでしょう。

さらに配偶者の勤務先には、念のため一時的な増収で年収130万円を超えた場合に、証明書があれば家族手当もこれまでどおり支給されるか確認しておくと安心です。

土屋剛(FP)

家族手当については、以下記事に詳しく書かれているので参考にしてくださいね!

注意点②一時的な増収で扶養内でいれるのは連続2年だけ

130万円の壁の支援策の注意点2つ目は、「一時的な増収で扶養内でいれるのは連続2年だけ」です。

106万円の壁の支援策と同じく、今回の支援策は”当面の対応として”行われるものになります。

そのため、一時的な増収が認められて扶養内で働けるのは、1人あたり原則として「連続2回まで=連続2年まで」となっており、

  • 一時的増収であっても
  • 3年連続で年収130万円以上稼いでしまうと
  • 扶養から外れてしまう

ので、注意が必要です。

土屋剛(FP)

では次に、2023年10月の年収の壁見直し以降は、どう働けばいいのかについてお話していきます。

2023年10月の年収の壁見直し以降はどう働けばいいの?

2023年10月の年収の壁見直し以降はどう働けばいいの?

2023年10月の年収の壁見直し以降の働き方に迷われている場合には、

  • 扶養内でいたい場合
  • 扶養を出て働きたい場合

で対応が変わります。

土屋剛(FP)

それぞれどういうことかお話していきますので、参考にしてくださいね!

扶養内でいたい場合

扶養内でいたい場合には、先ほど紹介したそれぞれの支援策の注意点をよく理解したうえで、今後の稼ぐ額や働く時間を調整しましょう。

ただし、ここまで紹介したとおり、上記はあくまでも一時的な支援策の注意点になります。

2025年度には年金制度改正が行われる予定で、年収の壁そのものが大きく変わる可能性が高いです

土屋剛(FP)

そのため、これからも扶養内でいたい方は、制度が変わっていく前提で最新情報を集めたうえで、今後の働き方をその都度よく検討したほうが良いでしょう。

扶養を出て働きたい場合

扶養を出て働きたい場合は今回の支援策は特に気にせず、扶養から外れても損をしない年収ラインを目標に、稼ぐ金額を増やしていきましょう!

扶養から外れても損をしない年収ラインとは?
  • 年収106万円以上で扶養を外れる方→年収125万円以上稼ぐのを目標にする
    ※「年収約106万円〜124万円」は働き損になる可能性が高いので注意
  • 年収130万円以上で扶養を外れる方→年収155万円以上稼ぐのを目標にする
    ※「年収約130万円〜154万円」は働き損になる可能性が高いので注意
土屋剛(FP)

詳しくは、ぜひ以下記事もあわせて参考にしてくださいね!

結論:2023年10月からの年収の壁の見直しには要注意

それでは最後に、2023年10月からの年収の壁の見直しについて重要なポイントを簡単におさらいしていきます。

本記事のまとめ

年収の壁とは、

  • 扶養内で働きたいパートやアルバイトが
  • 手取りが減らないように
  • 稼ぐ額を調整する年収のボーダライン

のことで、この壁があることで

  • 働き控えによって人手不足が起こる
  • 物価高でも稼ぐ力を強化しにくい

といった問題が発生しています。

そこで政府は、2023年10月からはこの問題を解決するために、

  1. 106万円の壁の支援策:手取りが減らないように助成金を支給
  2. 130万円の壁の支援策:一時的な増収なら扶養内のままでもOK

といった2つの支援策を行うことを決定しました。

ただし、今回の支援策はあくまでも一時的なもので、利用する際にはいくつかの注意点に気をつけなければなりません。

また、2025年度あたりには、年収の壁そのものが根本的に大きく見直されていく可能性が高いです。

そのため、扶養内で働く人も扶養を出て働く人も、年金制度関連の最新情報は意識的にチェックするのがおすすめでしょう!

以上、今回は2023年10月からの年収の壁の見直しについてお話しました。

人口減少・少子高齢化の日本において、今後は働き方に関連する法改正が頻繁に行われていく予定です。

土屋剛(FP)

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