【子育て世帯の所得制限】年収いくらから働き損になる?FPが解説

【子育て世帯の所得制限】年収いくらから働き損になる?FPが解説

最近では、

  • 実質賃金の低下
  • 物価高騰
  • 少子高齢化

などの影響を受け、厳しい状況にある子育て世帯のなかで、少子化対策への関心がかなり高まってきています。

特に、「各種子育て支援への所得制限」についての議論は加熱しており、連日SNSやニュースなどで所得制限の文字を見る機会が増えました。

とはいえ、

  • そもそもどんな子育て支援に
  • 年収いくらから
  • 所得制限がかかるのか

を正確に応えられる人はそう多くはないですよね。

そこで本記事では、子育て世帯を中心に活動しているFP歴16年の土屋が「子育て世帯の所得制限」について、以下の4つの内容を中心に役立つ情報を紹介していきます。

本記事の内容
  1. 【年収別】子育て支援の所得制限ライン一覧表
  2. 注意!所得制限を受けやすくなる子育て世帯の年代
  3. 所得制限ギリギリの年収ライン世帯の対策
  4. 子育て世帯の所得制限は今後撤廃される?
土屋剛(FP)

現時点では、所得制限ラインに引っかからない20代~30代の親御さんも本記事を読むと、他人事ではないことを実感される方が多いと思います。

子育てするうえで知っておいて損はない情報なので、ぜひ最後までご一読ください!

本記事の内容は、2023年3月4日時点の情報に基づいて作成しております。

執筆・監修者

土屋 剛(つちや ごう)

  • 株式会社FCTGファイナンシャルプランナーズ:代表
  • 講演実績:SBI証券や楽天等のマネーセミナー講師、確定拠出年金投資教育講師
  • 保有資格:ファイナンシャルプランナー(CFP®)、日商簿記2級、一種証券外務員資格
FP土屋
もくじ

【年収別】子育て支援の所得制限ライン一覧表

【年収別】子育て支援の所得制限ライン一覧表

結論からお伝えすると、現段階では世帯主年収または世帯年収が約910万円以上になると、さまざまな子育て支援の所得制限ラインに引っかかりやすいです。

土屋剛(FP)

詳しくは、以下2つの表をご覧くださいね!

年収別の子育て支援の所得制限ライン一覧表(その1)

年収
(目安)
児童手当
(世帯主年収)
幼児教育無償化
:0~2歳
(世帯年収)
幼児教育無償化
:3~5歳
(世帯年収)
高校無償化
:公立
(世帯年収)
高校無償化
:私立
(世帯年収)
270万以下
300万以下
380万以上
590万以上(約1/3)
910万以上
960万以上(5千円)
1200万以上

年収別の子育て支援の所得制限ライン一覧表(その2)

年収
(目安)
大学無償化
(世帯収入)
障害児福祉手当
(世帯主年収)
特別児童扶養手当
(世帯主年収)
遺族年金
(遺された妻の年収)
270万以下
300万以下(約2/3)
380万以上(約1/3)
590万以上
910万以上
960万以上
1200万以上

また、

  • すべての子育て支援の対象になる「年収270万円以下」
  • ほぼすべての子育て支援の対象外になる「1200万円以上」

の世帯を比べると、子ども1人が成人するまでにもらえる給付金や手当の総額の差が

  • 障害児がいない世帯:約1185万円以上(遺族年金を除く)
  • 障害児がいる世帯:約2296万円以上(遺族年金を除く)

にもなります。

土屋剛(FP)

では次に、それぞれの子育て支援について一つひとつ詳しく紹介していきますね!

児童手当

児童手当とは、

  • 国内在住の
  • 0歳から中学校卒業までの児童がいる
  • 家庭に給付される手当

のことで、年齢に応じて以下の金額が給付されます。

児童手当の内容

子供の年齢児童手当の額(1人あたり月額)
3歳未満一律1.5万円
3歳以上~小学校修了前1万円(第3子以降は1.5万円)
中学生一律1万円

ただし、所得制限があるため、世帯主の年収(目安)が

  • 960万円以上の場合:5千円
  • 1200万円以上の場合:0円

に減額されますのでご注意ください。

また、世帯主年収が1200万以上だった場合は、手当を満額受給できる家庭と比べて子供1人が誕生~成人するまでに総額で約210万円もの差が生じます。

幼児教育無償化

幼児教育無償化とは、

  • 幼稚園
  • 保育所
  • 認定こども園

などの保育料が無料になる制度のことです。

幼児教育無償化の内容

子供の年齢対象世帯
0~2歳児クラス住民税非課税世帯
3~5歳児クラスすべての世帯

大きなポイントとしては、3歳~5歳児クラスは幼児教育無償化の所得制限がありません。

そのため、3~5歳児クラスは親の年収に関係なく、すべての子どもが保育施設を無料で利用できます。

ただし、0~2歳児クラスの幼児教育無償化の対象世帯は住民税非課税世帯のみです。

そのため、

  • 神奈川で最も高所得者層の認可保育園の利用料が高い大和市で
  • 推定世帯年収1130万以上の世帯が保育標準時間を利用する場合
  • 0~2歳時クラスだと毎月88,500円の利用料を支払う

ことになります。

仮に0~2歳児クラスを2年利用した場合には、住民税非課税世帯と約212.4万円もの差が生じるので自治体別の所得制限ラインや保育料には注意しましょう。

高校無償化

高校無償化とは、

  • 高校の授業料が実質無償になる
  • 国の”高等学校等就学支援金制度”

のことです。

高校無償化の内容(両親共働きの場合)

子の数年間11.8万円支給対象
の世帯年収(目安)
年間39.6万円支給対象
の世帯年収(目安)
子1人(高校生)約1030万円未満約660万円未満
子2人(高校生・中学生以下)約1030万円未満約660万円未満
子2人(高校生・高校生)約1070万円未満約720万円未満
子2人(大学生・高校生)約1090万円未満約740万円未満
子3人(大学生・高校生・中学生以下)約1090万円未満約740万円未満

高校無償化の内容(両親のうち片方が働いている場合)

子の数年間11.8万円支給対象
の世帯年収(目安)
年間39.6万円支給対象
の世帯年収(目安)
子1人(高校生)約910万円未満約590万円未満
子2人(高校生・中学生以下)約910万円未満約590万円未満
子2人(高校生・高校生)約950万円未満約640万円未満
子2人(大学生・高校生)約960万円未満約650万円未満
子3人(大学生・高校生・中学生以下)約960万円未満約650万円未満

仮に、高校無償化の対象外になった場合には、対象世帯と比べて子ども1人あたり3年間で

  • 年間11.8万円の対象外世帯:35.4万円
  • 年間39.6万円の対象外世帯:118.8万円

もの差が生じます。

『注意!所得制限を受けやすくなる子育て世帯の年代』でも詳しく紹介しますが、子どもが高校生になると世帯収入が増えるご家庭も多いので注意が必要でしょう。

大学等無償化

大学無償化とは、

  • 「授業料等の減免制度」と「給付型奨学金」の
  • 2つの支援内容がセットになった
  • 国の”高等教育の修学支援新制度”

のことです。

一定の要件を満たすことを国が確認した

  • 大学
  • 短期大学
  • 高等専門学校(4年・5年)
  • 専門学校

に通う学生が支援を受けられます。

大学無償化の内容

対象の世帯年収(目安)授業料免除額(年額)給付型奨学金の支給額(年額)
約270万円未満約70万円約91万円
約300万円未満約47万円約61万円
約380万円未満約23万円約30万
  • 上記は4人家族「本人(18歳)父(給与所得者)母(無収入)中学生」で、本人がアパートなど自宅以外から私立大学に通う場合の支援額(年額)です。
  • 上記の世帯年収はあくまでも目安です。兄弟の数や年齢等の世帯構成などで所得制限のラインは異なります。
  • 出典:高等教育の修学支援新制度:文部科学省

上記の表を見ても分かるとおり、大学無償化は低所得者層向けの制度になるため、中間~高所得者層はその恩恵を受けられません。

住民税非課税世帯である世帯年収約270万未満の世帯と対象外の世帯を比べると、私立大学4年間で約644万円もの差が生じます。

障害児福祉手当・特別児童扶養手当

「障害児福祉手当」「特別児童扶養手当」とは、

  • 20歳未満の精神または身体に障害のある子どもを育てる
  • 父母又は養育者に対して支給される手当

のことです。

「障害児福祉手当」「特別児童扶養手当」の内容

対象の世帯主年収(目安)障害児福祉手当(年額)特別児童扶養手当(年額)
約858.6万円未満約17.8万円1級:約62.9万円
2級:約41.9万円

対象世帯と対象外の世帯では、子ども1人が成人するまでに約1,111万円もの差が生じます。

また、上記に加え所得制限のラインに引っかかったご家庭では、車いす代や装具も全額自腹になるため金銭的負担はさらに重くなるでしょう。

遺族年金

遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者の方が

  • 亡くなったときに
  • その方によって生計を維持されていた遺族が
  • 受け取ることができる年金

のことです。

遺族年金の内容

夫が死亡した年の前年の妻の年収(目安)遺族年金の支給額(年額)
約850万円未満約78万円(妻)+約22.4万円(子1人)
  • 亡くなったご主人の保険料が、支払いが必要な期間の1/3を超えて未納のときは支給対象外になります。(ただし、直近1年間納めていれば支給対象になります)
  • 子の加算額は、18歳到達年度の末日までの子ども(障害がある場合は20歳未満の子ども)が対象になります。1人目と2人目が1人につき約22.4万円、3人目以降が1人につき7.5万円です。
  • 上記はあくまでも目安です。兄弟の数や年齢・世帯構成・受給資格者の収入状況等によって、所得制限のラインは異なります。
  • 出典:遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構

対象世帯と対象外の世帯では、子ども1人が0歳~18歳到達年度の末日になるまでに約1945.6万円もの差が生じます。

土屋剛(FP)

では次に、所得制限を受けやすくなる子育て世帯の年代についてお話していきます。

注意!所得制限を受けやすくなる子育て世帯の年代

注意!所得制限を受けやすくなる子育て世帯の年代

ここまで読んで、

マネ美

我が家はそんなに年収が多くないし、所得制限ラインには引っかからなそう!

と安心している20代~30代の親御さんは注意が必要になります。

なぜなら、子どもが高校や大学に入学する頃になると、

  • 親御さんも年齢とともに年収が上がったり
  • 子どもが手を離れて、仕事に割ける時間が増えたり

する関係で、所得制限のラインに引っかかってしまう可能性が高まるからです。

特に、子どもが高校生や大学生のときに40代~50代になる共働き世帯は、世帯年収が所得制限のラインを超えてしまう危険性が高くなります。

【年代・男女別】年収の中央値(2022)

年代男性年収の中央値女性年収の中央値世帯年収の中央値(男女合算)
20代前半277万円241万円518万円
20代後半393万円316万円709万円
30代前半458万円309万円767万円
30代後半518万円311万円829万円
40代前半571万円317万円888万円
40代後半621万円321万円942万円
50代前半656万円319万円975万円
50代後半668万円311万円979万円
60代前半521万円257万円778万円
60代後半421万円208万円629万円
→40代前半~50代後半は所得制限に引っかかる可能性が高い!

また最近では、物価高騰や実質賃金の低下に伴い、賃上げ促進の動きが日本全体で高まってきています。

そのため、現行制度のままだと現在の年収は関係なく、子どもが高校生・大学生になった頃に所得制限に引っかかる可能性があることを留意しておきましょう!

土屋剛(FP)

では次に、所得制限ギリギリの年収ライン世帯の対策についてお話していきます。

所得制限ギリギリの年収ライン世帯の対策は?

所得制限ギリギリの年収ライン世帯の対策は、大きくわけて

  1. 子育て支援が手厚い(所得制限なし)自治体で暮らす
  2. iDeCoを利用や掛金の増額
  3. 小規模企業共済の利用や掛金の増額
  4. 医療費控除を申請する

の4つです。

特に、所得制限ギリギリの年収ライン世帯の対策で1番おすすめなのが「子育て支援が手厚い(所得制限なし)自治体で暮らす」になります。

というのも、最近では少子高齢化に伴い、各種子育て支援を手厚くしたり、所得制限を撤廃する自治体も増えてきているからです。

地方自治体が「子育て支援」の取り組みを強めている。出産や入学の祝い金、保育料の無償化など様々だが、所得制限なしに、「直接給付」を決めているところが目立つ。(中略)

  • 「入学祝い金として小1に5万円、中1に10万円」(東京都新宿区)
  • 「18歳以下に月5000円、第2子の保育料を無償化」(東京都)
  • 「小中入学時に5万円分の地域通貨ポイント」(徳島県美馬市)
  • 「18歳未満に3万円分の電子商品券」(岐阜県関市)
  • 「出産前に3万円の助成金」(宇都宮市)
一部引用:子育て支援は地方が国に先行「所得制限なしで給付」も目立つ|J-CASTトレンド

また、他にも所得から控除できる制度である

  • iDeCoの利用や掛金の増額
  • 小規模企業共済の利用や掛金の増額
  • 医療費控除の申請

によって、所得制限のラインに引っかからないように調整できる可能性もあります。

ぜひ、所得制限ギリギリの年収ラインになりそうな子育て世帯は、上記の対策を実践してみてくださいね!

土屋剛(FP)

所得や控除額等の計算をご自身でするのが難しい場合には、FP視点で分析のうえアドバイスすることも可能です。

お困りの際には、遠慮なくお声がけくださいませ^^

子育て世帯の所得制限は今後撤廃される?

子育て世帯の所得制限は今後撤廃される?

結論からお伝えすると、2023年3月4日時点では子育て支援への各種所得制限が撤廃されるかどうかはわからない状態だと言えます。

というのも、国はまだ将来的な子どもの予算倍増に向けた「たたき台」の議論を行っている段階だからです。

今後子育てに関係する団体などにヒアリングを行った上で、3月に論点整理を行い、政府が「骨太の方針」を策定する6月までに党としての提言をまとめる方針を確認しました。

一部引用:異次元の少子化対策 “大胆なたたき台を” 小倉少子化相 | NHK

ただし、

  • 2022年の出生数が初の80万人割れを起こし
  • 少子高齢化に拍車がかかっていること

を考えると所得制限が撤廃されるかは別として、今後なんらかの子育て支援は拡充される可能性が高いです。

そのため、子育て世帯の方はこれまで以上にニュース等への関心を高めておくのがおすすめでしょう!

土屋剛(FP)

マネきっずでも、新たな支援内容の詳細が法案等で可決された際にはお知らせしたいと思います^^

結論:子育て世帯は所得制限がかかる年収ラインに要注意!

それでは最後に、「子育て世帯と所得制限」について重要なポイントを簡単におさらいしていきます!

本記事のまとめ

現段階では世帯主年収または世帯年収が約910万円以上になると、さまざまな子育て支援の所得制限ラインに引っかかりやすいです

また、世帯主年収「1200万円以上」と「270万円」を比べると、子ども1人が成人するまでにもらえる

  • 児童手当
  • 幼児教育無償化
  • 高校無償化
  • 大学無償化
  • 障害児福祉手当
  • 特別児童扶養手当
  • 遺族年金

の給付総額の差が

  • 障害児がいない世帯:約1185万円以上(遺族年金を除く)
  • 障害児がいる世帯:約2296万円以上(遺族年金を除く)

にもなり、子どもを育てるうえでの金銭的負担は大きく異なってきます。

また、20代~30代時点では所得制限に引っかからない世帯でも、子どもが高校生~大学生になったあたりで40代~50代になる世帯では

  • 親御さんも年齢とともに年収が上がったり
  • 子どもが手を離れて、仕事に割ける時間が増えたり

する関係で、所得制限のラインに引っかかってしまう可能性が高まるので注意が必要です。

子育て世帯への各種所得制限が今後撤廃されるかは現時点では決まっていませんが、政府の動向を見ていると、今後子育て支援の内容が大きく変わりそうです。

そのため、子育て世帯の方はこれまで以上にニュース等への関心を高めておくのがおすすめでしょう!

以上、今回は最近ニュースやSNSでも話題になっている「子育て世帯の所得制限」についてお話しました。

今後も最新情報をチェックし、国の制度をうまく活用したうえで、可能な限り教育費を節約していきましょう!

土屋剛(FP)

制度を利用する際の年収(所得)調整などに悩まれた場合には、長期視点で分析やアドバイスを行うことも可能です。

お困りの際には、ぜひお気軽にお声がけくださいね^^

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