「今の暮らしは、収入に見合っているのかな」
「貯金はできているけれど、この生活水準を続けて大丈夫?」
「身の丈に合った生活をするには、もっと節約したほうがいいの?」
家計に不安を感じると、年収や生活費の平均と比べて、自分の家庭が使いすぎていないか確認したくなる方も多いでしょう。
しかし、身の丈に合った生活かどうかは、年収や毎月の生活費だけでは判断できません。
大切なのは、次の3点を確認し、今の暮らしを無理なく続けられる状態になっているかを見ることです。
- 年間収支が赤字になっていないか
- 急な支出に備えられているか
- 将来必要なお金を準備できているか
身の丈に合った生活とは、できるだけお金を使わず、我慢を続ける暮らしではありません。
家計の状況を把握し、家族が大切にしたいことへお金を使いながら、将来にも備えられる生活のことです。
この記事では、CFP®資格を持つFP土屋が、身の丈に合った生活の判断基準や生活水準を見直したほうがいいサイン、無理なく家計を整える手順を分かりやすく解説します。
「今の生活を続けても大丈夫なのか」と迷っている方は、ご家庭の家計を確認するためにお役立てください。
土屋 剛(つちや ごう)
- 株式会社FCTGファイナンシャルプランナーズ:代表
- 講演実績:SBI証券や楽天等のマネーセミナー講師、確定拠出年金投資教育講師
- 保有資格:ファイナンシャルプランナー(CFP®)、日商簿記2級、一種証券外務員資格

身の丈に合った生活とは?

身の丈に合った生活とは、収入や資産などの経済力に見合った範囲で、毎月の支出と将来への備えのバランスが取れている状態のことです。
「贅沢をしていないか」ではなく、今の暮らしを無理なく続けられるかどうかが大切な判断基準になります。
ここでは、生活水準や経済力の意味を整理しながら、「身の丈に合った生活」が節約や我慢ばかりの暮らしとは違う理由を解説します。
生活水準とは毎月のお金の使い方と暮らしの程度
生活水準とは、住居・食事・教育・趣味などにどのくらいお金を使い、どのような暮らしをしているかを表すものです。
生活水準が高いから良い暮らし、低いから我慢の多い暮らしとは限りません。何にお金をかけたいか、どのような暮らしを心地いいと感じるかは、家庭によって異なるからです。
実際のご相談でも、「うちは年収の割に生活が苦しい気がして……」と不安そうに来られる方は少なくありません。
しかし、詳しくお話を聞くと、同じ年収帯の家庭の生活費や貯蓄額と比べて、不安になっているケースもあります。
FP土屋他の家庭の数字は参考にはなりますが、それだけで自分の生活水準が適切かどうかは判断できません。
「身の丈に合う」は経済力に見合った範囲で選ぶこと
「身の丈に合う」とは、自分の家庭の経済力に見合った範囲で、日々の支出や住まい、教育などを選ぶことです。
ここでいう経済力には、毎月の収入だけでなく、次のような要素も含まれます。
- 現在の貯蓄や資産
- 収入が今後も続く見込み
- 将来予定している大きな支出
- 収入が減ったときに対応できる余裕
たとえば、今は問題なく支払えていても、ボーナスや残業代が減っただけで家計が赤字になる状態では、長く続けるのが難しい可能性があります。
ボーナスを前提に住宅ローンを組み、ボーナスが減った年に家計が一気に苦しくなったというご相談もあります。
「今いくらもらっているか」だけでなく、「その収入がどのくらい安定しているか」まで含めて考えることが大切です。



身の丈に合っているかを判断するときは、現在の収入額だけを見るのではなく、家計全体にどのくらい継続性・安定性があるかを確認しましょう。
節約や我慢ばかりの生活とは違う
身の丈に合った生活は、できる限り支出を減らし、我慢を重ねる生活ではありません。
食事や健康、子どもの成長に必要なお金まで削れば、一時的に支出は減らせます。
しかし、家族の負担やストレスが大きくなり、長く続けられなければ、家計の見直しとして成功したとはいえません。
すべての支出を減らす必要はありません。
自分や家族にとって必要な支出は残し、満足度の低い支出や負担の大きな固定費を見直しましょう。
目指したいのは、今の暮らしを楽しみながら、収入の減少や教育費の増加など、将来の変化にも対応できる家計です。
そのため、身の丈に合っているかどうかは、年収の多さだけでは判断できません。
次に、同じ年収でも無理なく続けられる生活水準が異なる理由を見ていきましょう。
身の丈に合った生活は年収だけでは判断できない
身の丈に合った生活かどうかは、年収だけでは判断できません。
同じ年収でも、家族構成や住んでいる地域、これから必要になるお金によって、無理なく使える金額は異なるからです。
ここでは、年収だけで判断できない理由を3つの視点から解説します。
同じ年収でも必要な生活費は家庭によって違う
同じ年収の家庭でも、必要な生活費はそれぞれ異なります。
たとえば、次のような条件によって、住居費や教育費、通勤費などは変わります。
- 子どもの人数や年齢
- 共働きかどうか
- 賃貸か持ち家か
- 都市部か地方か
- 車が必要かどうか
そのため、「同じ年収の家庭は生活費も同じくらい」とは限りません。
「世帯年収1,000万円なら生活費はこのくらい」といった一般的な数字を、そのまま自分の家庭に当てはめて不安になる方もいます。
しかし、子どもが2人以上いる家庭や、都市部で住居費の負担が大きい家庭などでは、平均よりも生活費が多くなることがあります。



他の家庭の平均額は参考になりますが、それだけで使いすぎかどうかを決めることはできません。
自分の家庭に必要な生活費を基準に考えることが大切です。
収入に対する支出割合だけでは判断できない
「手取り収入の何%までなら使ってもいいか」という支出割合は、家計を確認する一つの目安になります。
しかし、支出割合だけでは、次のような家庭ごとの違いを把握できません。
- 支出割合は高いものの、資産が多く、今後の大きな支出も少ない家庭
- 支出割合は低いものの、これから教育費や住宅ローンの負担が増える家庭
前者は数字だけを見ると「使いすぎ」に見えても、実際には家計に余裕があるかもしれません。
一方、後者は今の支出割合が低くても、数年後に支出が増えて家計が苦しくなる可能性があります。
「支出割合が○%を超えたら危険」という数字を見て、ご相談に来られる方もいます。
しかし、実際に家計全体を確認すると、資産状況や今後のライフイベントまで考えなければ、本当に危険かどうかは判断できません。
数字は目安として使い、それだけで一喜一憂しないことが大切です。



支出割合を見るときは、現在の数字だけでなく、貯蓄や資産、今後の支出予定もあわせて確認しましょう。
貯金額だけでなく今後必要になるお金も確認する
現在の貯金額だけを見ても、身の丈に合っているかどうかは判断できません。今あるお金だけでなく、これから必要になるお金も確認する必要があるからです。
家庭では、今後次のような大きな支出が発生する可能性があります。
- 子どもの教育費
- 住宅の購入費や修繕費
- 車の購入費や買い替え費用
- 老後の生活資金
今は十分な貯金があっても、数年後にまとまった支出を予定している場合は、その分を残しておかなければなりません。
反対に、現在の貯金額がそれほど多くなくても、これから必要になるお金を把握し、毎月無理なく準備できている家庭もあります。
このように、年収・支出割合・貯金額のどれか一つだけでは、身の丈に合っているかどうかを判断できません。
次の章では、今の家計を無理なく続けられるか確認するための3つの基準を、具体的に見ていきましょう。
身の丈に合っているか判断する3つの基準


身の丈に合った生活かどうかは、年収や支出割合、貯金額のどれか一つだけでは判断できません。
今の暮らしを無理なく続けられるか確認する基準は、次の3つです。
- 基準① 年間収支が継続的な赤字になっていない
- 基準② 急な出費に対応できる貯蓄がある
- 基準③ 将来必要なお金の準備を進められている
この3つをおおむね満たしていれば、年収の多い少ないにかかわらず、今のところ無理なく続けられる家計だと考えられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
基準① 年間収支が継続的な赤字になっていない
1つ目の基準は、ボーナスを含めた1年間の収入よりも、支出が多くなっていないことです。
旅行や帰省、家電の買い替えなどで、特定の月だけ赤字になることは珍しくありません。
そのため、身の丈に合っているかどうかは、毎月の収支だけでなく、1年間の収支で判断します。
たとえば、毎月の給与だけでは支出をまかなえなくても、ボーナスで不足分を補い、年間で黒字になっている家庭もあります。
このような家計が必ずしも問題とは限りません。
ただし、ボーナスを収入として見込む場合は、次の点を確認する必要があります。
- 勤務先から毎年安定して支給されているか
- 金額を低めに見積もっても年間収支が赤字にならないか
- 業績や個人の成果によって大きく変わるボーナスではないか
ボーナスの金額を予測しやすく、年間で必要な貯蓄もできているなら、毎月の収支だけを見て心配しすぎる必要はありません。
また、子どもの進学などで教育費がピークを迎える時期は、ボーナスを含めても年間収支が赤字になることがあります。
教育費として準備してきた貯蓄を予定どおり取り崩し、ピーク後に収支が改善する見通しがあるなら、一時的な赤字だけで生活水準に問題があるとは判断できません。
一方、計画的な取り崩しではなく、日常の生活費を補うために赤字が続いている場合は、生活水準の見直しを検討したほうがいいでしょう。
「毎月赤字だから、今の暮らしは身の丈に合っていない」と不安になる方もいます。
しかし、家計は月単位ではなく、年間収支や将来の見通しまで含めて考えることが基本です。
安定して受け取れるボーナスで補い、年間収支が黒字になっているなら、必ずしも問題はありません。
また、教育費のピークに備えて貯めてきたお金を、予定どおり取り崩すことで一時的に赤字になる場合もあります。



赤字という結果だけで判断せず、「何のための赤字なのか」「いつまで続くのか」「その後に収支が戻る見通しがあるか」を確認しましょう。
基準② 急な出費に対応できる貯蓄がある
2つ目の基準は、急な出費や収入の減少に対応できる貯蓄があることです。
生活していると、次のような予定外の出来事が起こることがあります。
- 病気やケガによる出費
- 家電や車の故障
- 勤務先の業績悪化や失業による収入減少
- 子どもに関する急な出費
こうした事態に備えるお金を「生活防衛資金」といいます。
生活防衛資金の一般的な目安は、生活費の3か月〜1年分程度です※。
ただし、すべての家庭に同じ金額が必要なわけではありません。
必要な金額は、次のような条件によって変わります。
- 共働きか片働きか
- 子どもの人数や年齢
- 収入がどのくらい安定しているか
- 病気や失業の際に受けられる保障があるか
- 頼れる家族がいるか
反対に、貯蓄がほとんどなく、急な出費があるとすぐにリボ払いや借り入れに頼らなければならない状態は、家計に十分な余裕があるとはいえません。
まずは家庭の状況に合った目標額を決め、少しずつ準備していきましょう。
子育て世帯では、子どもの急な受診や入院、学校で必要になる費用など、予定していなかった出費が重なることがあります。



生活防衛資金は、ただ置いておく「使わないお金」ではありません。いざというときに、暮らしや家族を守るためのお金です。
- 金融広報中央委員会「知るぽると」では、生活防衛資金の目安として生活費の3か月〜1年分が示されています。実際に必要な金額は、家族構成や働き方、収入の安定性などによって異なります。
基準③ 将来必要なお金も準備できている
3つ目の基準は、将来必要になる大きなお金を把握し、準備を進められていることです。
家庭では、今後次のような支出が発生する可能性があります。
- 子どもの教育費
- 住宅の購入費や修繕費
- 車の購入費や買い替え費用
- 老後の生活資金
今の家計が黒字で、急な出費に対応できる貯蓄があっても、将来必要になるお金をまったく準備できていなければ、いずれ家計が苦しくなる可能性があります。
ただし、必要なお金を今すぐすべて用意する必要はありません。
- 何のために必要なのか
- いつまでに必要なのか
- いくら必要になりそうか
- 毎月いくら準備すればいいか
これらを把握し、無理のない金額で積み立てを進められていれば、将来への準備ができていると考えられます。
3つの基準を整理すると、次のようになります。
| 基準 | おおむね満たしている状態 | 見直しを検討したい状態 |
|---|---|---|
| ① 年間収支 | ボーナスを含めた年間収支が赤字になっていない | ボーナスや貯蓄で補っても年間赤字になる |
| ② 急な出費への備え | 家庭の状況に応じた生活防衛資金を準備できている | 急な出費があると借り入れに頼る可能性が高い |
| ③ 将来のお金 | 必要な時期と金額を把握し、準備を進めている | 将来必要なお金を把握・準備できていない |
この3つをおおむね満たしていれば、今の暮らしを無理なく続けられる可能性が高いと考えられます。
当てはまらない項目がある場合は、次の章で紹介する「家計を見直したいサイン」に該当していないか確認してみましょう。
今の生活水準を見直したい7つのサイン


身の丈に合った生活を続けられているかは、日々のお金の使い方にも表れます。
ただし、次の項目に当てはまったからといって、すぐに「身の丈に合っていない」と決まるわけではありません。
家計全体を確認するきっかけになる7つのサインとして見てみましょう。
- リボ払いや手数料のかかる分割払いを選ぶことが増えている
- 生活費の不足を補うために、貯蓄を取り崩すことが続いている
- 収入が増えるたびに支出も増え、貯蓄に回せる金額が増えていない
- 住居費の負担が大きく、貯蓄や他の支出を圧迫している
- 毎月何にいくら使っているか、おおよその金額を把握できていない
- 周囲の暮らしぶりやSNSに影響されて、予定外の支出をすることが増えている
- 教育費や老後資金など、将来必要なお金の時期や金額を把握していない
当てはまった数だけで判断しない
7つのサインは、当てはまった数が多いほど危険というものではありません。
たとえば、住居費が手取り収入の3割を超えていても、他の支出を抑えながら、貯蓄や将来への備えができている家庭もあります。
この場合、住居費の割合だけを見て「身の丈に合っていない」と判断する必要はありません。
反対に、当てはまる項目が1つだけでも、生活費を補うためにリボ払いや借り入れを繰り返している場合は、優先的に見直したほうがいい可能性があります。
「7つのうち5つも当てはまってしまった」と落ち込む必要はありません。
家計全体を確認すると、貯蓄や将来への備えができていて、大きな問題がないケースもあります。
数を数えて一喜一憂するのではなく、どのサインが自分の家計に影響しているのかを確認することが大切です。



サインの数ではなく、「今の暮らしをこのまま続けても、将来まで無理なく過ごせそうか」という視点で家計全体を確認しましょう。
貯蓄の取り崩しが一時的か継続的かを確認する
7つのサインの中でも特に確認したいのが、生活費の不足を補うために貯蓄を取り崩している状態です。
ただし、貯蓄を取り崩したからといって、すぐに家計に問題があるとは限りません。
大切なのは、取り崩しの原因が一時的なものか、継続的なものかを確認することです。
- 一時的な取り崩し
家電の買い替え、冠婚葬祭、急な医療費など - 継続的な取り崩し
ボーナスを含めた年間収入より支出が多く、不足分を貯蓄で補っている
家電の買い替えなど、一時的な支出のために貯蓄を使った場合は、その支出が終われば元の家計に戻ることが多いため、過度に心配する必要はありません。
一方、ボーナスを含めても年間収支が赤字で、その不足分を継続的に貯蓄から補っている場合は、今の生活水準を見直したほうがいい可能性があります。
「今月はたまたま出費が多かった」と思っていても、数か月分の家計を振り返ると、同じような取り崩しを繰り返していることがあります。
ただし、家計は1か月だけで判断するものではありません。



「たまたまの支出」なのか、「年間で見ても支出が収入を上回っているのか」を数字で確認してみましょう。
自分の家計がどのような状態か分からない場合でも、これから紹介する内容を読み進めれば、見直しの必要性や具体的な進め方が見えてきます。
次の章では、生活水準を見直すことで得られるメリットを見ていきましょう。
生活水準を見直すと得られる3つのメリット


生活水準を見直すというと、我慢や節約をイメージし、気が重くなる方もいるかもしれません。
しかし、身の丈に合った生活を目指すことで得られるのは、支出を減らすことだけではありません。
家計の状況が分かり、必要な備えができることで、今の暮らしにも安心してお金を使いやすくなります。
ここでは、生活水準を見直すことで得られる3つのメリットを紹介します。
- お金に対する漠然とした不安が減る
- 急な収入減少や支出増加に対応しやすくなる
- 大切なことに安心してお金を使える
お金に対する漠然とした不安が減る
収入・支出・貯蓄・将来必要なお金を整理すると、漠然としていた不安の中身が明確になります。
「なんとなくお金が不安」と感じていても、家計の全体像が見えていなければ、何から対処すればいいのか判断できません。
今の家計が3つの基準(年間収支・生活防衛資金・将来必要なお金)をどの程度満たしているかを確認すれば、「何が不安なのか」が明確になり、必要以上に心配することが少なくなります。
たとえ現時点で基準を満たしていない項目があっても、「何がどのくらい足りないのか」が分かれば、今後の対応や優先順位を考えやすくなります。
ご相談の中でも、実際に家計を数字で確認したあとに「思っていたより大丈夫そうで安心しました」とおっしゃる方は少なくありません。
お金の不安は、実際の不足だけでなく、「今のままで大丈夫か分からないこと」から大きくなっている場合もあります。



数字で確認すると、改善する場所や優先順位が見え、気持ちも整理しやすくなります。
急な収入減少や支出増加に対応しやすくなる
収入に対して支出を抑え、一定の貯蓄を確保しておくと、急な収入減少や支出増加にも対応しやすくなります。
家計に余裕があれば、多少の減収や物価上昇があっても、慌てて生活に必要な支出まで削らずに済みます。
反対に、収入と支出がぎりぎりの状態では、わずかな変化でも家計が赤字になり、対応の選択肢が限られます。
子育て世帯では、病気や働き方の変化によって収入が減ることがあります。
また、進学に伴って教育費が増えたり、予定していた以上の費用がかかったりすることもあります。
あらかじめ家計に余裕を持たせておけば、このような変化が起きても、貯蓄を使う、支出の一部を調整するなど、状況に合った対応を選べます。
大切なことに安心してお金を使える
家計の優先順位が明確になると、自分や家族が大切にしたいことへ安心してお金を使えます。
生活水準の見直しは、すべての支出を一律に減らすことではありません。
家計の3つの基準を確認し、優先順位の低い支出を見直すことで、家族の楽しみや子どもの体験など、大切にしたいことへお金を回しやすくなります。
「いくらまでなら使っても大丈夫か」が分かれば、お金を使うたびに不安になったり、必要以上に我慢したりすることも減らせます。
家計を見直した方からは、「使っていい金額が分かり、以前より安心してお金を使えるようになった」という声を聞くことがあります。
貯蓄に回すお金と、今の生活を楽しむためのお金を分けておくと、使うときの不安や後ろめたさを減らせます。



生活水準を見直すことは、我慢を増やすことではありません。
今の暮らしを大切にしながら、将来にも備えるための手段です。
次の章では、生活水準を無理なく見直すための5つの手順を紹介します。
生活水準を無理なく見直す5つの手順


生活水準を見直すときは、いきなり支出を削るのではなく、まず家計全体を把握することが大切です。
一気にすべてを変えようとすると負担が大きくなるため、次の5つのステップを順番に進めていきましょう。
- STEP1 毎月の収入と支出を把握する
- STEP2 年間の特別費を洗い出す
- STEP3 固定費を見直す
- STEP4 満足度の低い支出を減らす
- STEP5 浮いたお金の使い道を先に決める
STEP1 毎月の収入と支出を把握する
最初のステップは、毎月の収入と支出の全体像を把握することです。
家計簿アプリや銀行口座、クレジットカードの明細を活用すれば、一つひとつ手入力しなくても、おおよその支出を確認できます。
完璧な家計簿をつける必要はありません。
まずは「何に」「毎月いくらくらい」使っているのかを把握することから始めましょう。
「家計簿が続かない」というご相談は多いのですが、最初から細かく記録する必要はありません。



「食費は月にいくらくらいか」「使っていないサブスクはないか」など、ざっくり確認するだけでも家計の課題が見えてきます。
STEP2 年間の特別費を洗い出す
2つ目のステップは、毎月は発生しないものの、年間を通じて必要になる特別費を洗い出すことです。
特別費には、次のようなものがあります。
- 帰省や旅行にかかる費用
- 家電や家具の買い替え費用
- 車検や自動車税などの費用
- 冠婚葬祭費
- 子どもの入学や進級にかかる費用
特別費を含めずに毎月の収支だけを見ていると、「毎月は黒字なのに、なぜか貯蓄が増えない」という状態になりやすくなります。
まずは、1年間に必要になりそうな特別費を見積もりましょう。
そのうえで、毎月少しずつ積み立てる、ボーナスから確保するなど、家庭に合った方法で準備します。
毎月の生活費だけでなく特別費まで含めることで、ボーナスを含めた年間収支を把握しやすくなります。
STEP3 固定費を見直す
3つ目のステップは、住居費・保険料・通信費・サブスクリプションなど、毎月ほぼ一定額がかかる固定費を見直すことです。
固定費は、一度見直すと翌月以降も効果が続きます。
食費や日用品費を毎日細かく削る方法と比べて、少ない手間で支出を減らせる可能性があります。
食費や日用品費を少しずつ削る方法は、負担を感じて続かなくなることもあります。一方、固定費は契約やプランを一度見直せば、その後も効果が続きます。
まずは使っていないサービスや、今の暮らしに合っていない契約がないか確認してみましょう。
ただし、固定費なら何でも削ればいいわけではありません。



保障内容を確認せずに保険を解約したり、費用だけを理由に住み替えたりすると、かえって暮らしへの負担が大きくなることもあります。
「解約できるか」だけでなく、今の自分たちの暮らしに合った内容か、変更によって生活や保障にどのような影響があるかまで確認しましょう。
STEP4 満足度の低い支出を減らす
4つ目のステップは、固定費以外の支出から、満足度の低いものを見つけて減らすことです。
ここで大切なのは、金額だけでなく、「その支出が自分や家族の満足につながっているか」という視点です。
たとえば、
- なんとなく続けている外食
- 通う回数が減った習い事
- 惰性で利用しているサービス など
支払っている金額に対して満足度が低いものから見直します。
反対に、子どもの体験や家族の楽しみなど、満足度の高い支出は、家計全体とのバランスを確認したうえで、できるだけ残す方法を考えましょう。
身の丈に合った生活とは、楽しみをすべて我慢することではありません。
限られたお金を、自分や家族が大切にしたいことへ優先的に使うことが大切です。
STEP5 浮いたお金の使い道を先に決める
最後のステップは、STEP1〜4の見直しで浮いたお金の使い道を、あらかじめ決めておくことです。
使い道を決めないままにしていると、いつの間にか別の支出に使ってしまい、家計を見直した効果を実感できないことがあります。
固定費の見直しで月1万円浮いても、使い道を決めていなければ、数か月後には元の家計に戻っていることがあります。
「浮いたお金は給料日に別の口座へ移す」など、見直しと同時にお金の流れまで決めておくことがポイントです。
浮いたお金は、家計の状況に合わせて、次の順番で使い道を考えてみましょう。
- リボ払いやカードローンなど、金利や手数料の負担が大きい借り入れがあれば返済を優先する
- 急な出費に対応できる貯蓄が不足していれば、生活防衛資金を準備する
- 生活防衛資金を確保できたら、教育費や老後資金など将来必要なお金を積み立てる
- いずれも問題がなければ、家族の楽しみや自己投資に使う



ただし、手元の貯蓄がまったくない状態で、浮いたお金のすべてを返済に回すと、急な出費があったときに再び借り入れが必要になる可能性があります。
借り入れがある場合も、急な出費に対応するための最低限の貯蓄を残しながら、返済とのバランスを考えましょう。
この5つの手順を順番に進めれば、必要な支出や家族の楽しみをできるだけ残しながら、今の家計に合った生活水準へ近づけていけます。
次の章では、生活水準を見直すときでも、安易に削らないほうがいい支出について解説します。
子育て世帯が削る前に慎重に考えたい4つの支出


子育て世帯の家計では、金額の大きさだけで削る支出を決めると、健康や安全、時間、家族の満足度に影響することがあります。
生活水準を見直すときは、支出額だけでなく、「削ったあとに家族の生活がどう変わるか」まで考えることが大切です。
ここでは、削る前に影響を確認したい4つの支出を紹介します。
- 医療や健康、安全に関わる支出
- 子どもの成長や体験につながる支出
- 家事・育児の負担を減らす支出
- 家族が楽しむための支出
医療や健康、安全に関わる支出
必要な医療や健康管理、子どもの安全に関わる支出は、生活水準を見直すときでも優先して確保したい項目です。
たとえば、次のような支出が該当します。
- 通院や治療にかかる費用
- 必要な薬や健康管理用品
- チャイルドシートやベビーゲートなどの安全対策用品
- 持病やアレルギーへの対応にかかる費用
こうした支出を削って家計が一時的に改善しても、必要な治療や安全対策まで減らしてしまえば、病気やケガへの備えが不十分になるおそれがあります。
支出額だけを見て判断せず、家族の健康や安全を守るために必要なものかどうかを確認しましょう。
家計を見直す際、保険料を減らすために「保険を解約したほうがいいですか」と相談されることがあります。
必要な保障までなくすと、万一のときに家計へ大きな影響が出ます。



保険料だけで判断せず、公的保障や貯蓄を確認したうえで、必要な保障と不要な保障を整理しましょう。


子どもの成長や体験につながる支出
子どもの成長や体験につながる支出は、金額だけを理由に一律に削らず、今の子どもに合っているかを確認することが大切です。
習い事や外遊び、家族での外出など、子どもの体験機会に関わる支出がこれにあたります。
すべての習い事を続ける必要はありません。
しかし、一律に削ってしまうと、子どもが楽しみにしている活動や、成長につながっている機会まで失うことがあります。
見直すときは、次の視点で続けるものと見直すものを分けましょう。
- 今の子どもに合っているか
- 本人が楽しんでいるか
- 家計への負担が大きすぎないか
- 無料または低額の方法へ置き換えられないか
「高いからやめる」と決めるのではなく、子どもの気持ちや成長、家計の状況をあわせて判断することが大切です。


家事・育児の負担を減らす支出
家事・育児の負担を減らすための支出は、なくした場合に誰の負担がどのくらい増えるかを確認してから見直しましょう。
たとえば、次のような支出が該当します。
- 食洗機やドラム式洗濯機などの時短家電
- 家事代行や宅配サービス
- 一時保育やファミリーサポート
- ミールキットや総菜などの調理負担を減らすサービス
こうした支出は「なくても生活できる」と考えられ、家計を見直す際の候補になりやすいものです。
しかし、削った結果、家事や育児の負担が増え、体調や仕事、子どもと向き合う時間に影響が出てしまうこともあります。
「食洗機やドラム式洗濯機は贅沢品ではないですか」と相談されることがあります。
しかし、共働き世帯やワンオペ育児の時間が長いご家庭では、時短家電が心身の余裕を保ち、仕事を続ける助けになっていることもあります。



金額だけでなく、その支出が生み出している時間や余裕まで含めて考えましょう。


家族が楽しむための支出
外食や旅行、趣味など、家族で楽しむための支出も、一律にゼロにする必要はありません。
すべての楽しみを我慢するような家計の見直しは、家族の満足度が下がり、長く続けにくくなります。
家族の楽しみに関わる支出は、すべてなくすのではなく、次のような方法で無理なく続けられる形に調整しましょう。
- 利用する回数を減らす
- 1回あたりの予算を決める
- 無料または低額で楽しめる方法へ変える
- 家族が特に大切にしたいものを残す
大切なのは、使う金額にメリハリをつけながら、家族の楽しみも守ることです。
4つの支出に共通しているのは、削ることで家計は一時的に改善しても、健康や安全、時間、家族の満足度に影響することがあるという点です。
生活水準を見直すときは、こうした支出まで一律に減らすのではなく、前章のSTEP3・STEP4で紹介した「固定費」や「満足度の低い支出」から優先して見直しましょう。
身の丈に合った生活についてよくある質問
ここまで解説してきた内容を踏まえて、身の丈に合った生活についてよくある質問に、Q&A形式でお答えします。
Q.身の丈に合った生活費はいくらですか?
A.身の丈に合った生活費は、収入や家族構成、住んでいる地域によって異なるため、一律の金額では決められません。
目安を知りたい場合は、この記事で紹介した次の3つの基準を満たしているか確認しましょう。
- 年間収支が継続的な赤字になっていない
- 生活費の3か月〜1年分を目安とした生活防衛資金がある
- 将来必要なお金の準備を進められている
年収や生活費の平均額と比べるのではなく、自分の家庭の収支と、将来必要になるお金から逆算することが、身の丈に合った生活費を知る近道です。
Q.貯金できていれば身の丈に合っていますか?
A.貯金ができているだけでは、身の丈に合った生活ができているとは言い切れません。
貯金額が多くても、将来必要になる教育費や住宅資金、老後資金を把握していなければ、必要な時期にお金が足りなくなる可能性があります。
貯金額だけでなく、次の点まで確認することが大切です。
- 何のために貯めるのか
- いつまでに必要なのか
- いくら準備すればいいのか
- 今の貯蓄ペースで間に合うのか
目的と必要額を整理し、将来の支出に備えられているかどうかで判断しましょう。
Q.生活水準は一度上げると下げられませんか?
A.生活水準は一度上げても見直せますが、契約や家族の生活に深く関わる支出ほど下げにくくなります。
たとえば、住居費や車、教育費などは、住み替えや契約変更、家族との話し合いが必要になるため、簡単には減らせないことがあります。
一方、通信費や保険料は契約内容を変更できる場合があり、外食や趣味などの変動費も比較的短期間で調整できます。
まずは家計の状況と残したい支出を整理し、実際に支出を減らす段階では、効果が長く続きやすい固定費から検討しましょう。
Q.収入が減ったときは何から見直せばいいですか?
A.収入が減ったときは、まず減収額と減収が続く期間を確認し、毎月の収支と年単位で発生する支出を整理しましょう。
家計の状況を把握できたら、次の順番で見直します。
- 利用していないサービスや不要な契約
- 通信費や保険料などの固定費
- 満足度の低い変動費
- 家族で優先順位を話し合う必要がある支出
食費や日用品費を無理に切り詰めることから始めると、日々の我慢が増え、長く続けにくくなります。
先に支出の土台となる固定費を見直し、それでも収支が合わない場合に、満足度の低い変動費を検討すると進めやすくなります。
Q.家族が節約に協力してくれない場合はどうすればいいですか?
A.家族が節約に協力してくれない場合は、減らしたい支出だけでなく、「何のために家計を見直すのか」を共有することが大切です。
生活水準の見直しは、家族の我慢を増やすことが目的ではありません。
無理のない家計を続けながら、将来に備え、大切なことへお金を使えるようにするための手段です。
まずは、次の内容を家族で確認してみましょう。
- 現在の収入・支出・貯蓄
- このままの生活を続けた場合の見通し
- 家族が大切にしたいこと
- 減らしてもいい支出
- できるだけ残したい支出
「これをやめて」と一方的に求めるのではなく、「教育費を準備したい」「家計の赤字を解消したい」など、共通の目的を決めると話し合いやすくなります。
それでも意見がまとまらない場合は、FPなど家計に詳しい第三者を交える方法もあります。
家計の状況を数字で整理し、中立的な立場から選択肢を示してもらうことで、夫婦のどちらかが一方的に我慢するのではなく、家族で納得できる見直し方を考えやすくなります。
まとめ|身の丈に合った生活は「我慢」ではなく家計の持続性で考えよう
身の丈に合った生活とは、できるだけお金を使わず、我慢を続ける暮らしではありません。
今の暮らしを大切にしながら、将来も無理なく続けられる生活のことです。
収入や生活費の平均額だけでは、それぞれの家庭に合った生活水準は判断できません。
次の3つの基準から、家計全体を確認することが大切です。
- 年間収支が継続的な赤字になっていない
- 生活費の3か月〜1年分を目安とした生活防衛資金がある
- 教育費や住宅資金、老後資金など、将来必要なお金の準備を進められている
家計を見直すときも、すべての支出を一律に減らす必要はありません。
まずは現在の収入・支出・貯蓄を整理し、家族が大切にしたいものを確認したうえで、次の支出から見直しましょう。
- 利用していないサービスや不要な契約
- 満足度の低い支出
- 見直し効果が続きやすい固定費
一方、次の支出は金額だけで判断せず、削ったあとの生活への影響まで考えることが大切です。
- 医療や安全に関わる支出
- 子どもの成長や体験につながる支出
- 家事・育児の負担を減らす支出
- 家族が楽しむための支出
家計の不安を整理し、将来に備えながら、家族が大切にしたいことへ安心してお金を使える状態を目指しましょう。
この記事を読んだら確認したいこと
身の丈に合った生活ができているか、まずは次の項目を確認してみましょう。
- 1年間の収入と支出を把握できている
- ボーナスで赤字を補う状態が続いていない
- 生活費の3か月〜1年分を目安とした生活防衛資金がある
- 教育費・住宅資金・老後資金など、将来必要なお金を把握している
- 将来必要なお金を計画的に準備できている
- 利用していないサービスや不要な契約がない
- 家族が大切にしたい支出を共有できている
- 支出を減らしたあとの生活への影響も考えている
すべてにチェックが入らなくても、すぐに生活水準を大きく下げる必要はありません。
チェックが入らなかった項目から、「今の家計で何を確認すればいいか」「どこから見直せそうか」を一つずつ整理してみましょう。
「自分の場合はどうなる?」と迷ったら


家計に合った生活水準は、収入や貯蓄額だけで決まるものではありません。
家族構成や子どもの年齢、住んでいる地域、住宅ローン、働き方、今後の進学希望などによって、必要なお金や優先したい支出は変わります。
次のような場合は、家庭だけで判断するのが難しいこともあります。
- 収入はあるのに、なかなか貯蓄が増えない
- 今の生活水準を続けていいのか分からない
- 教育費や住宅費、老後資金を同時に準備できるか不安
- 収入が減り、どの支出から見直すべきか迷っている
- 夫婦で残したい支出や減らしたい支出の意見が合わない
- 家計を見直したいが、家族だけでは話がまとまらない
このようなときは、FPなど家計に詳しい第三者へ相談する方法もあります。
収入・支出・貯蓄と今後の希望を数字で整理すると、ただ「節約したほうがいい」と考えるのではなく、今の生活をどこまで続けられるのか、何を残し、何を見直すといいのかを具体的に判断しやすくなります。
FP土屋へのご相談では、現在の家計だけでなく、教育費や住宅費、働き方なども含めて、ご家庭に合った生活水準と見直し方を一緒に整理します。
「わが家は使いすぎているのかな」「今のままで将来も大丈夫かな」と迷っている方は、一人で結論を出そうとせず、お気軽にご相談ください。
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更新履歴
- 2026年8月13日:記事全体を見直し、身の丈に合った生活の判断基準、生活水準を見直すサインと手順、削る前に慎重に考えたい支出、よくある質問を追加・更新しました。
- 2021年12月9日:記事内容を更新しました。
- 2021年7月8日:記事を公開しました。
参考文献
この記事は、以下の情報を参考に、CFP®資格を持つFP土屋の実務経験と見解を加えて執筆しています。
※制度や統計の内容は、記事更新時点の情報をもとにしています。最新情報は、各機関の公式サイトでご確認ください。





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