もし病気やケガで働けなくなったときに、収入が途絶えてしまったら、家計が心配になりますよね?
そんな不安を軽減してくれるのが、「傷病手当金」という制度です。
しかし、”もらわないほうがいい”という噂も耳にして、
実際はどうなんだろう?
と気になっている方も多いと思います。
そこで今回は、お金の専門家であるFP歴16年の土屋が、傷病手当金の3つの代表的な噂について真相を徹底検証!
さらに、傷病手当金をもらうべき理由や、知っておきたいポイントも詳しく解説します。
本記事で傷病手当金について知っておけば、いざというときにも安心です。
最後まで読んで、傷病手当金に関する疑問をスッキリ解決していきましょう^^
土屋 剛(つちや ごう)
- 株式会社FCTGファイナンシャルプランナーズ:代表
- 講演実績:SBI証券や楽天等のマネーセミナー講師、確定拠出年金投資教育講師
- 保有資格:ファイナンシャルプランナー(CFP®)、日商簿記2級、一種証券外務員資格
傷病手当金はもらわないほうがいい?3つの噂の真相
傷病手当金に関する噂は、
- 一度使うと、支給期間の関係で必要なときに使えない
- 傷病手当金を使うと、生命保険に加入できなくなる
- 転職に不利になる
の3つです。
上記の噂の真相を、このあとに一つひとつ解説していきますね!
噂1:一度使うと、支給期間の関係で必要なときに使えない
噂の真相:これは誤りです。
2022年1月からは制度が改正され、 1度傷病手当金をもらっても、支給開始日から通算1年6ヶ月まで傷病手当金を受け取れるようになりました。
例えば、
- 3ヶ月休んで傷病手当金をもらい復帰したあと
- 1年6ヶ月後に、再び同一のケガや病気で1ヶ月休んでも
- 2回目の1ヶ月分の傷病手当金も受給することが可能
なのです。
つまり、同一のケガや病気の場合、1回目の休業時に1年6ヶ月分の傷病手当金をもらっていない場合には、回数に関係なく2回目以降も残りの期間分だけ傷病手当金を受給できます。
傷病手当金の支給期間
- 出典:令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます|厚生労働省
- 「現行」となっている文言を「改正前」に変更
噂2: 傷病手当金を使うと、生命保険に加入できなくなる
噂の真相:これも誤りです。
傷病手当金をもらったことで、生命保険に加入できなくなることはありません。
生命保険の審査では、過去の病気やケガの履歴は考慮されますが、傷病手当金を受給したかどうかは直接関係ないからです。
つまり、
- 傷病手当金を受給しても、生命保険に加入できます。
- 傷病手当金を受給したことで、保険料は値上げされません。
- 傷病手当金とは直接関係はありませんが、病気やケガの状態によっては、生命保険に加入できなくなるケースがあります。詳しくは、加入を検討している生命保険会社にお問い合わせください。
噂3:転職に不利になる
噂の真相:これも誤りです。
傷病手当金を受給していたことで、転職活動が不利になることはありません。
なぜなら、転職活動において、過去の傷病手当金の受給有無を転職先に伝える義務はないからです。
ただし、転職活動中に面接などで、
- 現在の健康状態
- 過去の病気やケガの経過(完治したか、再発の可能性はないか)
- 前職での休業期間
については、転職先から確認されるケースがあります。
その際は、例えば
- 業務に影響が出ない場合
→「前職では休職して治療に専念したおかげで、現在は完治しております!」 - 業務に影響が出る場合
→「半年に1度ほど、定期検診で半休をもらいたいです」
と伝えておくと、採用後も双方が安心して働ける環境が整うはずです。
では次にほとんどの噂は誤りで、もらったほうがお得なことがわかった”傷病手当金の制度”についておさらいしていきます!
もらったほうが断然お得!傷病手当金の制度をおさらい
傷病手当金は、病気やケガで仕事に就けないときに、生活保障のためにお金が支給される制度です。
概要
- 健康保険の加入者で、支給条件を満たしていれば受給できます※
- 同一のケガや病気に対して、支給開始日から通算1年6ヶ月の傷病手当金が支給されます。
- 国民健康保険は、基本的に傷病手当金は非該当(自営業やフリーランスは対象外)
4つの支給条件
傷病手当金は、次の1~4の条件すべてを満たしたときに支給されます。
- 業務外で負った病気・けがによる療養である※1
- 仕事に就けない状態である※2
- 休業期間中、給与の支払いがない※3
- 待期期間を満たしている※4
- 1:業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)や病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外となります。
- 2:仕事に就けない状態か否かは、医師の診断および被保険者の業務内容などの諸条件を考慮して判断されます。
- 3:給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給されます。
- 4:病気やケガで3日連続休むと、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。
待機期間と支給開始日について
支給金額
傷病手当金としてもらえる金額は、月給の約6割(給与の約2/3)です。
具体的な計算式は、以下のとおりになります。
傷病手当金の計算式
- 1日あたりの支給金額 =【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)
尚、被保険者の期間が12ヶ月に満たない場合は、以下の平均額のいずれかの低い額で傷病手当金が算定されます。
被保険者期間が12ヶ月に満たない場合の傷病手当金の算定方法
- 当該被保険者の被保険者期間における標準報酬月額の平均額
- 被保険者の標準報酬月額の平均額
傷病手当金がいくらもらえるのか具体的にシミュレーションしてみたい場合には、あくまでも目安ではありますが、以下サイトを参考にするのもおすすめです。
申請方法や流れ
傷病手当金の一般的な申請方法や流れは、以下のとおりです。
- 医療機関を受診して、診断書をもらう
- 勤務先に申請書を提出する
- 勤務先が健康保険組合等に申請する
- 書類の審査が終わると、支給される
- 傷病手当金の申請は、給与の支払い有無について事業主の証明が必要になります。そのため、1ヵ月単位で給与の締切日ごとに申請するケースが多いです。
- 傷病手当金には、申請期限があります。労務不能であった日ごとにその翌日から2年で1日ずつ時効が起算されます。
詳しい情報は、
のホームページや勤務先などに確認してください。
では次に、傷病手当金についてよくある7つの質問にお答えしていきます!
傷病手当金についてよくある7つの質問
傷病手当金についてよくある質問は、以下の7つです。
それぞれFP視点のアドバイスも交えながら、みなさんが気になる疑問にズバッとお答えしていきます!
Q1:有給休暇と傷病手当金、どっちを使ったほうがお得?
A:状況によって使い分けるのがベスト!
- 短期休暇なら有給休暇
→3日連続休んだあとに、4日目以降も休まないと傷病手当金は申請できない
→傷病手当金の申請が不要になるので、有給休暇のほうがスムーズ
→有給休暇のほうが、もらえる金額が多い - 長期休暇なら傷病手当金
→重度のケガや病気で数週間以上の休職が必要な場合、傷病手当金が有利
→「有給休暇を残せる」「有給休暇が足りなくなるのを防げる」などのメリットもある
- どちらを選ぶべきかは、有給休暇の残り日数や休暇期間によって異なります。傷病手当金は1ヶ月毎に申請する場合が多いので、そのときの状況に応じて使い分けるのがおすすめです。
- 勤務先によっては、独自の休業補償制度を導入しているケースもあります。どちらがお得か悩んだ場合には、勤務先の福利厚生等も確認するようにしましょう!
Q2:傷病手当金の支給対象外になるケースは?
A.傷病手当金の支給条件を満たしていない場合は、支給対象外となります。
また、国民健康保険に加入している方は、(フリーランスや自営業)基本的に傷病手当金の対象外です。
さらに、
- 出産手当金
- 障害年金・障害手当金
- 老齢退職年金
- 休業補償給付
を受給している場合は、傷病手当金の支給額の一部または全額が調整(減額)されます。
- 育休中であっても、傷病手当金の要件を満たせば、「傷病手当金」と「育児休業給付金」を同時に受給することが可能です。(どちらも減額されません)
- 詳しくは、勤務先や健康保険組合に確認しましょう!
Q3:傷病手当金を受給中に退職をしたらどうなる?
A.以下2つの条件を満たしている場合は、退職後も傷病手当金を受給できます。
- 退職日まで、継続して1年以上健康保険に加入している
- 退職日まで、傷病手当金をもらっている・もらえる条件を満たしている
ただし、退職日に少しでも仕事をしてしまうと、退職日以降の傷病手当金はもらえなくなってしまうので注意してください。
また、退職後に老齢年金を受給することになった方は、傷病手当金はもらえなくなります。(※老齢年金の額が少ない場合は、その差額がもらえる場合があります。)
- 退職後も条件を満たせば、通算1年6ヶ月は傷病手当金をもらえます。
- 傷病手当金と失業給付金は同時に受給できません。
→失業給付金の受給は、働くことができる方に対する給付だから - 傷病手当金をもらっている間は、失業給付金の受給期間延長ができます。
→詳しくは、公共職業安定所(ハローワーク)にご確認ください。
Q4:傷病手当金の支給期限内に治らなかったらどうなる?
A.復職が難しい方は、傷病手当金が終了する前に障害年金の申請がおすすめです。
障害年金とは、病気やケガで日常生活や仕事に支障が出た方がもらえる年金です。
- 障害年金は、傷病手当金よりも長期間安定して受給が可能です。
- 障害の程度(等級)によって、もらえる金額が異なります。
- 傷病手当金と障害年金を同時に満額受給することはできません。
→傷病手当金の支給額の一部または全額が調整されます - 障害年金について詳しく知りたい場合は、「政府広報オンライン」や「日本年金機構」のサイトを参考にするのがおすすめです。
Q5:傷病手当金は申請してから何日くらいで支給される?
A.申請してから、約2週間〜1ヶ月程度で支給(振込)されるケースが多いようです。
ただし、加入している保険組合によって日数にはバラツキがあります。
また、
- 申請書の記載内容に不備がある
- 添付書類が不足している
- 医療機関等への照会に時間がかかる
- 審査期間が年末年始やGWなど祝日等と被っている
場合には、審査に時間がかかるため、通常よりも支給(振込)が遅れる可能性が高いです。
- 傷病手当金はすぐに支給(振込)されないので、生活防衛資金(貯金)があるとより安心!
→生活防衛資金の詳しい説明は、こちらの記事を参考にしてください。
Q6:1回目と違う病気やケガで休業したらどうなる?
A.1回目とは全く異なる病気・ケガの場合、再度通算1年6ヶ月傷病手当金が支給されます。
なぜなら、傷病手当金には、
- 1つの病気・ケガに対して
- 通算1年半の傷病手当金を支給する
といった決まりがあるからです。
もちろん1回目でも2回目でも、支給金額・期間に変わりはありません。
そのため、例えば
- 1回目:交通事故(ケガ)
- 2回目:病気による入院
で休職した場合には、それぞれの病気やケガに対し、通算1年6ヶ月の傷病手当金が支給されるのです。
- 異なる病気やケガで、2回目の傷病手当金を受け取る場合には、改めて待機期間(3日連続休業の後、4日目以降も休業)をクリアする必要があります。
- 同一の病気やケガで復職後に再度休業する場合は、待機期間がなくても2回目の休業からすぐに傷病手当金が支給されます。
- 1回目と2回目の病気やケガに関連性があると判断された場合には、それぞれの病気やケガに傷病手当金は支給されません。
→1回目から通算して、1年6ヶ月の傷病手当金が支給されます。
Q7:傷病手当金で足りない分を補うために民間保険に加入すべき?
A.民間の医療保険よりも、現金(貯金)でお金を貯めておくのがおすすめです。
なぜなら、
- 日本は公的保険が手厚い(高額療養費制度、障害年金など)
- 民間の医療保険は、掛け金以上の保険給付金を受け取れない確率が高い
- 民間の医療保険は、契約時に定めた支払い条件に合致しないと給付金が支払われない
といった理由から、民間の医療保険に加入しても損をしてしまう可能性が高いからです。
- 民間の医療保険にいくら投資をしても、そのお金を使えるのは医療費にのみ。
→手術や入院が必要にならない限り、保険料が捨て金になってしまう - 不安なら、医療保険代わりの貯金をはじめるのがおすすめ!
結論:傷病手当金をもらわないほうがいいという噂は誤り!
それでは最後に、「傷病手当金」について重要なポイントを簡単におさらいしていきます。
傷病手当金に関する、
- 一度使うと、支給期間の関係で必要なときに使えない
- 傷病手当金を使うと、生命保険に加入できなくなる
- 転職に不利になる
の3つの噂は誤りです。
病気やケガで長期休業が必要になった場合は、利用したほうがお得です。
心配せずに活用していきましょう!
傷病手当金についてよくある質問についての回答は、以下のとおりです。
- Q1:有給休暇と傷病手当金、どっちを使ったほうがお得?
→A:状況によって使い分けるのがベスト! - Q2:傷病手当金の支給対象外になるケースは?
→A.傷病手当金の支給条件を満たしていない場合は、支給対象外 - Q3:傷病手当金を受給中に退職をしたらどうなる?
→A.条件を満たせば、退職後も傷病手当金を受給できる - Q4:支給期限内に治らなかったらどうなる?
→A.復職が難しい方は、傷病手当金が終了する前に障害年金の申請がおすすめ - Q5:傷病手当金は申請してから何日くらいで支給される?
→A.申請してから、約2週間〜1ヶ月程度で支給(振込)されるケースが多い - Q6:1回目と違う病気やケガで休業したらどうなる?
→A.1回目とは全く異なる病気・ケガの場合、再度通算1年6ヶ月傷病手当金が支給される - Q7:傷病手当金で足りない分を補うために民間保険に加入すべき?
→A.民間の医療保険よりも、現金(貯金)でお金を貯めておくのがおすすめ
詳しくは、加入している健康保険組合や勤務先に問い合わせてみてくださいね!
以上、今回は「傷病手当金」についてお話しました。
病気やケガで働けなくなったときに役立つ制度なので、ぜひ頭の片隅に本記事の内容を留めておいていただけたらと思います。
また、働けなくなったときに金銭面のご不安がある場合には、FP視点で個別にアドバイスすることも可能です。
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