育児の大変さを実感すると、「育休明けの職場復帰」に不安を感じますよね。
”子育てと仕事の両立”といった高いハードルを目の前にして、給付金だけもらって退職しようか悩む方も多いはずです。
しかし、実は育休の給付金だけもらって仕事を辞めるライフプランには、長い目で見るとメリットだけではなく大きなデメリットもあります。
そこで本記事では、FP歴15年の土屋が700世帯以上の個別相談にのってきた経験をふまえて、「育休の給付金だけもらって仕事を辞めるメリット・デメリット」を紹介しました!
お忙しいと思いますが、ぜひ最後までご一読ください。
5分~10分ほどお読みいただければ、長い人生で後悔しないための何かしらの気づきを得ていただけるのではないかなと思います。
(人によっては、生涯賃金が大幅にアップする可能性があります)
土屋 剛(つちや ごう)
- 株式会社FCTGファイナンシャルプランナーズ:代表
- 講演実績:SBI証券や楽天等のマネーセミナー講師、確定拠出年金投資教育講師
- 保有資格:ファイナンシャルプランナー(CFP®)、日商簿記2級、一種証券外務員資格
育児休業給付金だけをもらって辞めるのは法律的には可能
育児休業制度(以下、育休)の給付金だけをもらって仕事を辞めるのは法律的に可能です。
もちろん、本来育休は職場復帰を前提とした制度なので、
給付金だけもらって辞めるのは気まずい気がする。
会社に迷惑をかけてしまうのではないか…?
と思う方もいるかもしれません。
しかし、さまざまな事情があり全員が全員、職場復帰できるわけではないです。
その点は気にしすぎず、まずは自分の人生を優先して本記事を読みつつ育休明けの復職について考えてみましょう。
そもそも育児休業制度とは?
対象者 | 会社員(諸条件あり※1) |
給付期間 | 原則子供が1歳に達するまで(保育園の待機などで最長2歳まで) |
育休中にもらえる金額(月額) | 180日間は休業前の給料の67%、それ以降は50%分もらえる |
節税ポイント※2 | 社会保険料、所得税が免除 |
- 1:2022年4月1日から育休制度が段階的に改正されます(詳しくはこちら)→「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」
- 2:節税されるので、実質は手取りの最大80%の賃金をもらえます。
- 3:出典:育児・介護休業法について|厚生労働省
育休中に退職した場合は、退職後の給付金は受け取れない
育休中に退職することになった場合には、退職後の給付金はもらえません。
また、職場復帰を前提とした制度のため、最初から職場復帰しないつもりだった場合にはそもそも給付金が支給されないのでご注意ください。
育休期間終了と同時に退職・転職した場合は?
元の職場に復帰する前提で育休を利用していたものの、さまざまな事情で育休期間終了後に退職・転職することなった場合にも、給付金は満額もらえます。
もちろん返金の義務はありません。
ただし、育休期間終了前後に転職する場合には注意してください。
なぜなら、「転職のタイミング」や「転職先での勤務日数・勤務時間」によっては、
- 保育園の入園が内定している子供
- 在園中のご兄弟
の入園が取り消しになるケースがあるからです。
自治体ごとに保育園入園の要件が異なるので、詳しくはお住まいの市区町村の役所にお問い合わせくださいね!
では次に、育休の給付金だけもらって仕事を辞めるメリットを紹介していきます。
育休の給付金だけもらって仕事を辞めるメリット4選
育休の給付金だけもらって仕事を辞めるメリットは、
- 保育所の空きを心配しなくても良い
- 仕事を休むのを気にしなくていい
- 仕事と育児の両立に悩まなくていい
- 勤務先が遠くても通勤時間を気にしなくていい
の4つになります。
それぞれ詳しく紹介していきますね!
①保育所の空きを心配しなくても良い
育休の給付金だけもらって仕事を辞める1つ目のメリットは、「保育所の空きを心配しなくても良い」点です。
最近では、少し緩和されてきたと言われる待機児童問題。
しかし、一部地域では依然としてかなり厳しい状態です。
育休中の親御さんも、保育所の待機で最長2歳まで育休期間が延長になるとはいえ、
もしこの次に内定をもらえなかったら、どうしよう…。
第一希望の園に受からなかったら、通勤ルート的に厳しくなるな。
など、妊娠中から気が気でなかった人も多いと思います。
とはいえ、育休中や育休明けのタイミングで職場復帰をあきらめれば、そういった心配はしなくても良くなります。
小さい子どもを抱えて保活する精神的ストレスからは解放されそうです。
②仕事を休むのを気にしなくていい
育休の給付金だけもらって仕事を辞める2つ目のメリットは、「仕事を休むのを気にしなくていい」点です。
保育園といえば、入園してから大変になるのが「鼻水・咳・発熱」などの風邪の諸症状になります。
特に0歳~3歳児までの乳幼児クラスは、風邪を引きやすい子だと「1ヶ月のうち1週間も保育園に行けてない」という状態になってしまうことも珍しくありません。
当然、
両親の有給だけでは足りず欠勤扱いになり、給料がパートレベルになってしまった。
しょっちゅう、呼び出しの電話がかかってくるので職場の人に気まずい…。
といった問題と向き合いながら、仕事を続けなくてはならないので復職先が
- 理解のある職場でなかったり
- 労働環境的に休暇を取るのが厳しかったり
する場合には、育休中から子供の風邪問題を心配する方も多いと思います。
その点、仮に育休中や育休明けに退職をすれば、子供の具合が悪くても誰に気兼ねすることなくゆっくり家で過ごせます。
③仕事と育児の両立に悩まなくていい
育休の給付金だけもらって仕事を辞める3つ目のメリットは、「仕事と育児の両立に悩まなくていい」点です。
例えば、
- 体力的に自信がない
- 仕事も子育てもちゃんとしたい
場合は、自分が本当に働きながら育児ができるのか自信がない人も多いと思います。
特に、近くに頼れる人がいない方はそういった不安も大きいですよね。
その点、育休中や育休明けに退職する場合には、育児だけに集中できるので余計な心配をせずに済みます。
仕事への配分も考えなくて良いので、自分のペースで子育てができるでしょう。
④勤務先が遠くても通勤時間を気にしなくていい
育休の給付金だけもらって仕事を辞める4つ目のメリットは、「勤務先が遠くても通勤時間を気にしなくていい」点です。
特に通勤に片道40分~1時間ほどかかる方は、タイムスケジュール的に保育園に送迎しながら仕事を続けることに不安を覚えるかもしれません。
その点、育休中や育休明けに退職する場合には通勤が無くなるので、毎日時間に追われることもなくなります。
赤ちゃん時期の子供とも、じっくりお家で過ごせるでしょう。
では次に、育休の給付金だけもらって仕事を辞めるデメリットを紹介していきます。
育休の給付金だけをもらって仕事を辞めるデメリット4選
育休の給付金だけもらって仕事を辞めるデメリットは、
- 再就職が難しくなる
- 生涯賃金に大きな差が出る
- 働き手の稼ぎが減少した際に家計が大打撃を受ける
- 育児や家事負担が主婦(主夫)側に偏りがちになる
の4点です。
どういうことか、それぞれ解説していきますね!
①再就職が難しくなる
育休の給付金だけもらって仕事を辞める1つ目のデメリットは、「再就職が難しくなる」点です。
例えば、子育てが落ち着いてきた頃に再就職しようと思っても、
- 求職中だと、点数的に保育所に子供を預けられない
- 幼稚園の預かってくれる時間内で働ける場所がない
などの問題で、再就職がかなり厳しくなるケースが多いです。
一度退職してしまうと、働きたくても預け先がなくて働けなくなる人が多いです。
育休中に退職を検討する場合には、退職後の人生計画もしっかり立てておきましょう。
②生涯賃金に大きな差が出る
育休の給付金だけもらって仕事を辞める2つ目のデメリットは、「生涯賃金に大きな差が出る」点です。
例えば育休後退職して子供が10歳の頃にパート勤務を始めた場合と育休後すぐに復職した場合では、生涯賃金に最大で約1億円もの差が出ます。
さらに、育休後両親のどちらかがずっと専業主婦(主夫)だった場合には、その差は約1.3億円にまで広がるのです。
ライフスタイル別の生涯賃金の内訳
30歳で育休後退職 以後、専業主婦(主夫) | 30歳で育休後退職 40歳からパート | 30歳で育休後復職 以後、正社員 | |
---|---|---|---|
育休前年収 | 2,250万円 | 2,250万円 | 2,250万円 |
復職後の年収 | - | 2,500万円 | 1億500万円 |
退職金 | - | - | 1,200万円 |
年金 | 2,400万円※3 | 2,400万円※3 | 3,600万円※4 |
総額 | 4,650万円 | 7,150万円 | 1億7,550万円 |
- 1:退職前年収300万円、パート年収100万円、正社員復帰後年収300万円で算出
- 2:65歳で退職する場合で算出
- 3:国民年金は月8万を25年もらう場合で算出
- 4:厚生年金は月12万を25年もらう場合で算出
もちろん子供が小さい間は、仕事はせずに育児に集中するライフスタイルも1つの選択です。
しかし、働かない期間が長くなればなるほど、金銭面のツケは老後資産や教育費の不足といった形で現れてきます。
先程説明したように、「夫の給料だけでやっていくのが厳しい」と気付いた場合にも、退職後の再就職は厳しいものです。
育休後の退職を考える場合には、そのあたりも含めて慎重に検討したほうが良いでしょう。
③働き手の稼ぎが減少した際に家計が大打撃を受ける
育休の給付金だけもらって仕事を辞める3つ目のデメリットは、「働き手の稼ぎが減少した際に家計が大打撃を受ける」点です。
というのも、今の時代
- トヨタなどの大企業が「終身雇用を守っていくのは難しい」と発言したり
- 急激な社会情勢の変化で業績が傾き、リストラやボーナスカットがあったり
など、正社員であっても昔ほど雇用状況が安定しなくなっています。
育休後に両親のどちらかが仕事を辞めてしまい、収入源が1つになってしまうと、緊急時の家計リスクが高くなってしまうのです。
いざというときに困窮しないために、ご夫婦で育休後のライフワークバランスについてしっかり話し合っておくのがおすすめでしょう!
④育児や家事負担が主婦(主夫)側に偏りがちになる
育休の給付金だけもらって仕事を辞める4つ目のデメリットは、「育児や家事負担が主婦(主夫)側に偏りがちになる」点です。
育休後に仕事を辞めると、育児や家事に集中できる代わりに、その負担も家にいる主婦(主夫)側に偏りがちになります。
実際に、
育児と仕事の両立が難しいと思って仕事を辞めたけど、ずっと育児と家事だけをしている方が大変だった。
ずっと家にいる生活が思ったよりも辛いから、子供を預けて仕事をしたい…。
といった声を聞くケースも少なくありません。
とはいえ、実際に体験してみないと、自分に合う生活スタイルがどちらなのか判断がつきませんよね。
そういった場合には、この次に紹介する4つの対策を実践した上で、育休の給付金だけもらって仕事を辞めるかを決めるのがおすすめです。
育休の給付金だけもらって仕事を辞めるか迷った際の4つの対策
ここまでご紹介したメリット・デメリットを聞いて、育休の給付金だけをもらって仕事をやめるか悩んでしまった場合には、
- ライフプランを作成して長期的なシミュレーションをする
- 会社と相談して負担を軽減してもらう
- パートナーと相談して育児・家事負担をシェアする
- 復帰後に転職を検討する
の4つを実践してみるのがおすすめです。
どういうことか、一つひとつ解説していきますね!
①ライフプランを作成して長期的なシミュレーションをする
育休の給付金だけもらって仕事を辞めるか迷った際の1つ目の対策は、「ライフプランを作成して長期的なシミュレーションをする」です。
先程もお伝えしたとおり、育休中や育休後に仕事を辞めると、
- 再就職が難しくなる
- 生涯賃金に大きな差が出る
- 働き手の稼ぎが減少した際に家計が大打撃を受ける
といった点から、金銭面で将来的に問題が起こる可能性が高くなります。
そのため、まずはそもそも育休中や育休後に退職をしても、家計的に問題がないのかをライフプランを作成して長期目線でシュミュレーションしてみるのが重要です。
実際に計算して数字を出してみることで、仕事を辞めても家計的に問題がないのかをリアルな感覚として捉えられるようになります。
「ライフプランを作成するメリット」や「ライフプランの作成方法」を知りたい方は、ぜひ以下記事もあわせて参考にしてくださいね!
②会社と相談して負担を軽減してもらう
育休の給付金だけもらって仕事を辞めるか迷った際の2つ目の対策は、「会社と相談して負担を軽減してもらう」です。
- 勤務先が遠い
- 勤務時間が長く、子育てとの両立が難しい
- 職務内容的に、頻繁に休めない
などの問題は、会社と相談することで、
- 自宅または保育所に近い勤務先に変えてもらえる
- 時短やフレックスタイム制で、ライフスタイルに合った働き方ができる
- 子育て中は休みやすい部署に移動させてもらえる
など、融通を効かせてもらえる可能性があります。
まずは、退職を決める前に一度話を聞いてみましょう。
ちなみに育児休業制度には、給付金以外にも以下のような決まりがあります。
ぜひ知識として頭に入れておいてくださいね!
育児のための所定外労働の制限〈残業の免除〉※
3歳に満たない子を養育する労働者が子を養育するために請求した場合には、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはならない。
育児のための時間外労働の制限※
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者がその子を養育するため、又は要介護に請求した場合には、事業主は制限時間(1か月24時間、1年150時間)を超えて時間外労働をさせてはならない。
育児のための深夜業の制限※
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者がその子を養育するため、に請求した場合には、事業主は午後10時~午前5時(深夜)において労働させてはならない。
育児のための所定労働時間短縮の措置※
3歳に満たない子を養育する労働者に関して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設けなければならない。
③パートナーと相談して育児・家事負担をシェアする
育休の給付金だけもらって仕事を辞めるか迷った際の3つ目の対策は、「パートナーと相談して育児・家事負担をシェアする」です。
現在の日本では、共働き率が約7割を超えています。
しかし、日本では圧倒的に、母親側の家事・育児負担が大きくなっているのです。
それでは、どうしても仕事と育児の両立が難しくなってしまいますよね。
そういった場合には、ママ・パパ双方の意識から変えていきましょう。
具体的には、
- ネット・本で夫婦の子育ての価値観をアップグレード
- 令和テクノロジー活用で家事を時短・合理化
- 働き方の見直し&家族会議をする
といった方法を取ることで、どちらかに負担が偏るのを軽減して、育休後もお互いに働きやすい環境を整えていけます。
詳しい方法は、以下記事で解説しているのであわせて参考にしてくださいね。
④復帰後に転職を検討する
育休の給付金だけもらって仕事を辞めるか迷った際の4つ目の対策は、「復帰後に転職を検討する」です。
正直、実際に復職をしてみないと
- 自分の会社がどの程度子育てに理解があるのか
- 今の職場環境で育児と両立できるのか
は想像がつかない部分も多いですよね。
また、保育所問題を考えると、復職後に転職をしたほうが入園取消などのトラブルに巻き込まれないので落ち着いて転職活動を進められます。
働き続けるつもりであれば、諦めずに復職してから子育てに理解がある会社で働くという選択肢を選んでも良いのです。
実際に相談者さまの中には、「保育園に子供を入園させてからライフスタイルに合わせて転職をした」という方もおられます。
一度退職してしまうと再就職が難しい現実を考えて、まずはすぐに退職せずに様子を見る方向で考えるのもおすすめでしょう。
結論:育休の給付金だけもらって辞めるかの決断は計画的に!
それでは最後に、「育休の給付金だけもらって仕事を辞めるか」について重要なポイントを簡単におさらいしていきます。
育児休業給付金だけをもらって辞めるのは、法律的には可能です。
また、育休後に給付金だけもらって仕事を辞める場合には、
- 保育所の空きを心配しなくても良い
- 仕事を休むのを気にしなくていい
- 仕事と育児の両立に悩まなくていい
- 勤務先が遠くても通勤時間を気にしなくていい
といったメリットがあります。
一方で、
- 再就職が難しくなる
- 生涯賃金に大きな差が出る
- 働き手の稼ぎが減少した際に家計が大打撃を受ける
- 育児や家事負担が主婦(主夫)側に偏りがちになる
のように金銭面を考えると、育休中や育休後に退職するデメリットは大きいです。
育休後にどうするか悩んでしまった場合には、
- ライフプランを作成して長期的なシミュレーションをする
- 会社と相談して負担を軽減してもらう
- パートナーと相談して育児・家事負担をシェアする
- 復帰後に転職を検討する
の4つの対策を実践した上で、計画的に今後の方向性を決めましょう。
以上、今回は育休後に仕事をやめるか否かについて役立つ情報を紹介しました。
ポイントは今だけではなく将来も見据えて、パートナーと共に今後どのように人生を歩んでいくかを長期目線で考えることです。
自分たちだけで家計を長期的にシュミュレーションするのが難しいという場合には、ライフプランを作成してFP視点でアドバイスやサポートもできます。
産後の働き方についてお悩みの際は、ぜひ当事務所のサービスも活用してみてくださいね!
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